アリ・アスター監督、初の長編ホラー映画。怖い映画は女優さんの顔も怖い。
映画概要
- 2018年公開
- 制作国:アメリカ
- 監督:アリ・アスター
- キャスト:トニ・コレット、アレックス・ウォルフ、ミリー・シャピロ
グラハム家の祖母・エレンが亡くなった。娘のアニーは夫・スティーブン、高校生の息子・ピーター、そして人付き合いが苦手な娘・チャーリーと共に家族を亡くした哀しみを乗り越えようとする。自分たちがエレンから忌まわしい“何か”を受け継いでいたことに気づかぬまま・・・。 やがて奇妙な出来事がグラハム家に頻発。不思議な光が部屋を走る、誰かの話し声がする、暗闇に誰かの気配がする・・・。祖母に溺愛されていたチャーリーは、彼女が遺した“何か”を感じているのか、不気味な表情で虚空を見つめ、次第に異常な行動を取り始める。まるで狂ったかのように・・・。 そして最悪な出来事が起こり、一家は修復不能なまでに崩壊。そして想像を絶する恐怖が一家を襲う。 “受け継いだら死ぬ” 祖母が家族に遺したものは一体何なのか?
公式サイト引用
ジャンルが変わる不安定なストーリー展開
この映画の予告編を見たとき、一番印象に残るのは、ミリー・シャピロ演じる娘・チャーリーではないでしょうか。
見た目のインパクトもさることながら、行動も不穏。舌を鳴らす癖もなんだか不気味です。

序盤は「エスター」や「オーメン」などの「悪魔の子」ホラーだと思わせる展開ですが、ショッキングなシーンを終えて、ジャンルが変化します。(ネタバレ回避)
そこから、ホームドラマ的な内容が濃くなっていきます。最も監督が描きたかったのは、「家族が崩壊していく様」ではないかと思います。ホラー映画と銘打って入るものの、実際は「人間の負の部分」や「狂気」を描き、観客に精神的苦痛を与える、サイコ・スリラー的要素が強いと思いました。
純粋なホラー映画を観たい方は、楽しめないかもしれません。
参考にした作品がロバート・レッドフォード監督の「普通の人々」。水死事故で長男を亡くしたことをきっかけに家族が崩壊していく様子を描いだ作品です。
家族の崩壊
監督は、自分の家族にある不幸が起こり、その経験を踏まえて映画の構想を練り始めたという。また、過去短編作品でも家族の歪んだ愛を描いています。家族の絆、家族のあるべき姿、理想などの綺麗事をぶち壊す表現は、アリ・アスターならではといった感じ。

家族という狭いコミュティで繰り広げられる地獄を、今作にも丁寧に組み込まれています。
私が印象深かったシーンは、中盤の家族の食卓シーンです。自分の過ちを認めようとしない息子ピーターにアニーの怒りが爆発。「家族の死を乗り越え、絆が深まる」というよくあるホームドラマのストーリーを全否定し、逆に家族を崩壊させる場面は、映画史上最も居心地の悪い食卓であると思います。
逃れられない運命

映画タイトルにもある「継承」は、映画の避けられない悲劇的なテーマであると私は考えます。
「親から子へ引き継がれる」という不合理、不条理から逃れられない運命に抗い、どうにかしようとしている姿をただ見せられる不愉快な映画(褒めています)です。
最後に
これは、私の個人的な感想ですが、主人公は不遇な人生を送ってきたにも関わらず、自分の子供を守ろうとしている姿は、家族愛だと思いました。夢遊病を患っている主人公ですが、その人格が真の母親なのかも…?と想像したりしました。